34歳からはじめる自由帳

あれが好きななにかについて言葉にするブログだわんわん。チャームポイントは誤時脱字。

読書と戦争、あと官僚の健全な選択について

 読書が好きだ。とにかくいろんなことに興味を持ちやすく、そうして抱いた知りたいという気持ちに答えてくれるのが本との対話であった。

 

 幼少期からの自分を振り返ってみると、こと読書については親がお金をかけてくれたんだと思う。家には小さな自分が見上げるような本棚があり、その本棚には大好きな絵本に加えて、まだ見知らぬ世界についての情報がぎっしりつまってた。

 

 たいへんありがたい。ありがたいけど、

 便所に行こう→そういえば便所近くの部屋にある本棚のあの本が気になるわ→畳の部屋で本を広げ読み始める→その様子を親がそっと観察しているという出来事があったんですけど、キモかったです。イメージ的には穏やかな鬼女です。

 

https://twitter.com/dorthymodsley

 

 大学進学にあわせて東京で生活を始めたとき、都内有数の古本屋街に住むことになった。大学での授業を終えて帰宅するときには古本屋が道路にラックを広げて売っているやっすい文庫本と新書を覗いて帰った。

 

 文学好きの先輩に勧められて夏目漱石を読み始めた。50円から近代文学が売られ、小銭さえあれば良質な文章に触れられるそのまちが自分の人格形成の基礎を作ってくれたと今では思える。

 

 そうしてとりあえず安い良質な本を読むという雑多な読書を続けてきたのだけれど、ある時、読書はシチュエーションによって内容が頭に入る割合が全く異なるということを学んだ。とある本の読み方を指南する本では、本屋で買って家に帰るまでの電車での読書が一番効くということを書いていて、いや、まさにそのとおりだよと膝を叩いた。

 

 シチュエーション的にグッとくる、その季節の定番ものとして戦争関係の本を8月の15日前後に読むようにしている。

 

 昔から戦争について知りたいと思っていた。父が微妙に兵器に興味があり、幼少期からそうしたプラモデル作りに付き合っていこともあるのかもしれない。少なくとも兵器を媒介にした親子関係は、健全ではないのかもしれないけど自分にとっては大切な親との結節点であった。

 

 また、暴力を合理的に組織化した団体同士の諍いの結末というのにも学生になってから関心を持った。城山三郎経済小説の旗手として有名だけれども、組織と個人の意思のミスマッチについていても一貫して書いていて、彼が戦争を題材にそうしたテーマを書いた本もかなり個人的に刺さった。

 

 ダラダラ思うところを書いた。つまりは8月というシチュエーション的に一番戦争関係の本が頭に入る時期である。あるときから8月は戦争ものの本を読む季節となった。

 

 今年読んだ本の中でも刺さったのは吉田裕の一兵士から見た戦争の現実を描いた本だった。

 

 日本軍の戦死者の50%は病や飢えによるものであり、加えて15%は海上輸送中の敵軍による攻撃により死んだらしい。

 

 こんなブラックな組織って他にあるだろうか。ちなみに中国に展開する部隊には、補給で飯とか十分送れんから現地でなんとかしてくれや(現地民からいただきましょう)的なお達しがあったらしい。なんなん?総務部(的な部署)のやつ頭おかしいんちゃう?なんで総務の不作為の尻拭いを現場でせんといかんのや。

 

 今年の読書で感じたこと。もはやかつての戦争を現役世代として経験してこなかったおれからすると、戦争とはつまるところ、組織が持つ能力以上のミッションを与えられてもがいた結末として個人がわりをくうという、寓話的なお話のように思える。総力戦の中で生産力にまさるアメリカになんかよっぽど相手がチキンじゃねえと勝てねえってわかってただろ。

 

 わかってたけど、諸々の事情にやらざるを得なくなりやってしまったらしい。

 

 でも、こうした世界は大日本帝国終結とともに終わったわけじゃない。今でも公務員の王道を行く官僚は過労死ラインを超える業務をそのお気持ちに基盤をおいて"決死"の覚悟で働いている

 

 突然だけど、学歴の話。難しいとされる大学に入った人間は情報の入力→編集→出力といった一連の情報処理に優れていることが推測される。もちろん注意したいこととして、そもそもそうした大学を目指さなかった人間もいることだし、ある難しいとされる大学に入らなかった人間がそうした難しいとされる大学の入学者に比して情報処理に劣るということの証明にはならない。

 

 しかしそれを置いておいても、東大卒の情報処理に優れた人間が官僚なんかやっていなければ新卒の労働市場でもっといい評価を受けていたはずなのに、同級生より安い賃金で酷使されている。もはや、かつてのような天下りと渡りで若い頃の同級生との賃金差を回収する方法も封じられているのに。

 

 天下りと渡りによる報酬はけしからん、という批判者の気持ちはわかる。しかし、一方で、労働者に相応の報酬を与えなければ優秀な人は集まりにくいというのも想像される当然の帰結である。こうしたメカニズムがある中で、ある種のお気持ち搾取に全力で乗っかって官僚になったものの、まっとうで人間らしい感性を持った有能な方々がコンサルティングファームに流出しており、それが問題となっているという。

 

 いや、でもね、問題って言うけど、すばらしいじゃないですか。奴隷的状況から脱出した人間一人の判断を祝福してやれよ。組織と個人の間の葛藤の一番わかり易い解決方法である。

 

 ところで、でおれの友人の自衛隊に務める友人は毎月80時間残業をして、睡眠薬を飲んでるらしい。

 

 友人の友人は経産省に入ったあと、速攻で総合商社を受け直して入ったらしい。でしょうね。30前半で一本もらえるんだもん。あたりまえじゃね?

 

 そういうわけで戦中と戦後は完全に切れてはいないみたいだ。

 

 戦争はいけません、反対だっていうのは本当にそのとおりだと思う。でも、もっと身近な問題として、一人の人間としてかつての戦争に引き寄せて現状を考えるとしたら、組織が持つ能力以上のミッションを与えられてる組織では働くなっていうことじゃないでしょうか。

 

 みなさん、一人の人間として送る最適な人生に向けての選択を重ねていきましょう。

 

 

 

 

この世界の片隅に

この世界の片隅に

  • メディア: Prime Video