34歳からはじめる自由帳

あれが好きななにかについて言葉にするブログだわんわん。チャームポイントは誤時脱字。

某通信社

 その昔、某通信社でアルバイトをしていた。

 

 社員さんはみな魅力的な人ばかりで、思春期に倒れた父に変わって働く男性のモデルを示してくれたと思う。ただまあ、自由な人もいて、そうした人は女性の派遣社員の男性関係を探っていた。取材力の無駄遣いや。でも、そういう人間らしさを持つ社員さんも含めてぼくは今でも共同通信が好きだ。

 

 すいません、ちょっとだけ嘘をついた。すげえ変なおっさんもいた。しかもそのおっさんの後に便所の個室に入るとすげえくせえんだ。

 

 話を戻す。新聞社は社員を雇って社員の取材成果を記事に落としこみ、また、頑張って集めた広告を紙面にプリントアウトしたものを読者に売ることで生計を立てている。とすれば、取材をどれだけ広く深く展開できるかがその新聞のクオリティを左右することになるが、地方紙には日本全国、世界規模の取材ネットワークを展開する力がない。そのため、各地方の新聞社が出資者としてお金を出し合い、新聞社の代わりに広域的に取材して記事を"生産"する。そうして"生産"した記事を出資者が運営にお金を払う代わりに紙面に載せるというモデルである。

 

 おれはある国に滞在した経験があって、その国の言葉は話せます、いえ、〇〇語を僕から取ったら何も残りません!!くらいのことを言ってバイトで採用してもらった。結構うけてて、面白い学生だと思ってもらったんだと思う。後々、その国の人に電話を掛けた時のダメ具合から嘘が露呈して焦った。

 

 ところで、マスコミのことをマスゴミと揶揄する人が結構いる。

 

 もちろん批判されるべきことはたくさんある。しかし、よく言う陰謀論的な仕事をしている様子を垣間見たことはない。みなさん一人の記者として自分の仕事に真摯に取り組んでるように思えた。

 

 もともとは記者志望だったけれども、結果的にマスコミ業界に進むことはなかった。相談した社員さんに「斜陽産業だよ」といわれたり、自分の在職中に照明が間引かれはじめたりと業界のつらさを皮膚感覚で感じたことも原因である。別のバイト友だちは、社員さんが車座になって酒を飲みながら「こんな仕事をいつまでもつづけられない」とぼやいている現場を見たらしい。長時間労働が当たり前でつらいだろうなと思う。

 

 その某社が今経営危機に陥っているらしい。

 

 でも、おれは、あの個性的な個人事業主の集まりのような不思議な会社がなくなってほしくないと思う。

 

 自分の仕事に一生懸命で時に怒鳴りあいになったり、クセがあるけれどもしっかり取材対象と人間関係を築いていたり、人間らしさを丸出しにして、そのらしさを問われる人たちが集まって日々のニュースを支えているあの会社が大好きだった。個性の集まりみたいな人たちがしっかり噛み合ってニュースを生産する現場の居心地の良さと社員さんへの信頼感は今でも忘れられない。